研究の具体的な進め方等

(1)研究の具体的な実施項目・方法

webアンケートを通した分析対象事例の選定
RQ1)本評価手法の適用可能範囲は限定されるのか?
(研究志向型の都市部大規模国立大学:九州大学、「教育」「研究」「社会貢献」のバランスがとれた地方国立大学:高知大学、社会貢献の取組が豊富な都市近郊国立大学:和歌山大学での比較を通して)に対応して、3大学(各大学20〜100サンプル)+琉球大学を対象としたwebアンケートを実施する。研究と社会貢献の両立というのは難しいところもあり、例えば、ノーベル賞を目指す研究志向型の研究者に産学連携をせよと勧めてもそれは無理があろう。どこまで対象に出来るのか検討する。

研究者を産学連携・地域連携活動へ向かわせる要因に関する調査
上記により選定した事例につき、若手の頃から産学連携・地域連携活動に取り組んできた中堅・シニア研究者10-15名程度を目安としたZoomインタビューを実施する。どのような特質をもつ中堅あるいはシニア研究者であるのか、彼ら彼女らが求めるインセンティブは何か(人材、資金、研究環境の整備等)を調査・分析する。分析結果に基づいて、その属性別にその特質ある要因を取り上げて評価に生かす。例えば、海に強い高知大学の事例で言えば、ひとつに文部科学省事業であるIMTで育成された水産系の教員を主軸としての検討が出来る。海洋深層水分野の様に広がりの見られる特筆すべき産学連携事業については、高知大学内に限らずに広く産学連携における一般化を調査する目的で追インタビュー(大田治久米島町長、琉球大学副学長・社会連携担当である竹村明洋教授、琉球大学学長補佐(産学官連携)である瀬名波出教授/内諾済)も実施する。


評価システムの構築に係る政策課題の検討
上記により得られた要因や知見に基づき、既往の評価事業の項目と照らし合わせなが
ら、それらを評価システムの構築に結び付ける上での課題を検討する。その際、選定大学の産学連携・地域連携事業を主な検討の対象とし、現行の評価システムの全体像の把握とそれぞれが各ステークホルダーの行動をどのように誘導しているのか、その基礎的なモデルを㈰、㈪を通して明らかとして、㈫では、産学連携に取り組むことが将来のキャリアにプラスになる仕組みづくりを事業例とそれに付随する具体的なインセンティブを基に検討する。

鈴木千賀(産学連携・地域連携活動に取り組む研究者のインセンティブ構造に関する研究)

(2)研究者と行政官の共進化の具体的なイメージ

既存研究同じく、行政側は本研究に関わる最新の意見を研究者に提供することで調査の方向性を随時最新の状況に合わせて見直しながら事業を推進することに寄与することとなる。研究者側は既に有する知見に加えて最新の動向を調査することで、行政側の意向も含めたより適切な調査結果をまとめることに寄与出来る。また、研究者と行政側は感染対策が万全なZoomを介した定期打合せの機会を通し緊密な連携をとりながら成果の最終的な取りまとめも含めて全てZoomを介して共同でおこなう(旅費の支給は不要)。
これにより行政側のニーズを適宜、学術的関心に反映させるとともに、研究成果を効果的に政策形成過程に実装していくことが可能になるものと考えられる。本研究でターゲットとする地方大学での産学連携の推進を直接的に担当する文部科学省 産業連携・地域支援課 地域支援室の協力を得ることでも合意している。成果が地方大学を中心とした産学連携の推進、地域におけるイノベーション・エコシステム構築の推進の観点から活用できるか、またどうすればより活用できるものとなるかといった観点から産学連携・地域支援課地域支援室 岸良優太専門官にも議論に参加して頂く。

鈴木千賀(産学連携・地域連携活動に取り組む研究者のインセンティブ構造に関する研究)